30年前、夫婦2人、原野の開拓から始まる「ほたる村物語」
第一章 ほたる村がある日和佐ってどんなとこ?
四国の右下、徳島県美波町(旧日和佐)にある、自然体験施設ほたる村。
日和佐に魅了されたカッパのげんさんとカッパ子さんは今から30年前に、兵庫県から日和佐に移住してきます。
今は当たり前になりつつある移住ですが、当時はとても珍しかったそうです。カッパのげんさんやカッパ子さんは移住の先駆者でした。
カッパのげんさんはトラック運転手、カッパ子さんは調理師として働いていましたが、二人はそれまでの仕事をきっぱりやめて、日和佐に移り住んだのです。そこには二人を惹きつける何があったのでしょうか。
日和佐は海亀が来る町として知られています。四国八十八カ所の中で唯一の厄除け寺である23番札所薬王寺があり、その眼下に日和佐の町は広がっています。そこに、海亀が来ることで有名な大浜海岸があります。
海亀はとてもデリケートな生き物です。産卵するためには、砂浜が汚れていないこと、街灯などで明るくないこと、騒がしくないことなどの海亀が安心して産卵できる自然環境が欠かせません。
日和佐には、原生林が残る山々、その谷底を流れ、水質が日本一と言われる日和佐川など、長年地域の人々に大切によって自然環境を保たれてきました。大浜海岸はまさに海亀の産卵に適した場所だったのです。
そんな日和佐の自然に魅了され、多くの仲間に見送られて30年前に移住してきたのが、
カッパのげんさんとカッパ子さんでした。
第二章 ほたる村開拓スタート!
二人は古民家を買い入れ、日和佐での生活がスタートしました。
ある日カッパのげんさんは知り合いから「田んぼに興味ないか?蛍が舞うええところがあるんや」と言われます。
カッパのげんさんは、友人の勧めということもあって、早速その場所を一緒に見に行ってみました。
するとカッパのげんさんはびっくり仰天、目の前には、その先が見えないほどの大きな田んぼや原野、そして、それらを取り囲むように山々が広がっていました。
いつかは農業をやってみたいと思っていたカッパのげんさんはその場で、「よし気に入った、買う!」と宣言。
野球場ほどの広さのある土地をその場で買うと決めてしまったカッパのげんさんに、その場所を紹介してくれた友人の方がびっくり仰天だったよう。
田んぼこそきれいに整えられていたものの、周辺は草木が伸びた原野そのもの。
テレビもない、電話もない、自動販売機もない、あるのは青い空、緑の山々、水のせせらぎと鳥のさえずりだけ、まさにそんな場所でした。
カッパのげんさんは、ほたるが舞うその場所を「ほたる村」と名付けました。
ほたる村を開拓するために、カッパのげんさんとカッパ子さんで、今でもほたる村に残るレンガ作りの小さなトイレ小屋を建てました。そうやって、ほたる村の開拓はスタートしていったのです。
第三章 大賑わいのほたる村
毎日せっせと草刈りや開墾作業を行う二人を応援しようと多くの友人が駆け付けました。
みんなが集うカッパ亭を皮切りに、ほたる村を一望できるほたる村山荘、手作りログハウスのごとまっさん荘などの自然体験施設が、ほたる村を訪れた人たちの協力によって作られていきました。
そんな噂を聞きつけ、いつしか友人以外にも、多くの人たちがほたる村を訪れるようになり、少しずつほたる村は賑わい始めていくのです。
カッパのげんさんとカッパ子さんには、みんなを楽しませる特技があります。それは、大道芸です。
昔遊びに精通するカッパのげんさんは、コマを自由自在に操るコマ名人。和太鼓だってお手の物。
手先が器用なカッパ子さんは皿回しや南京玉すだれの名人。
県内、全国、はたまた海外まで出向いてその妙技を披露し、たくさんの人たちを楽しませてきました。
ほたる村がスタートして、10年ほど経つ頃から、ほたる村祭りが開催され、1日に2,000人もの人がほたる村を訪れることもありました。
子供から大人まで、皆で昔遊びや和太鼓、大道芸に絵本教室など、いろいろな文化に触れて、お祭りを楽しんだようです。
ほたる村の後継者となるUさんも5歳の頃からほたる村を訪れていて、ほたる村祭りを楽しんだ1人だったのです。
第四章 ほたる村に後継者現る!
ゆりさんも夫ののぶさんも会社に勤めて、毎日忙しく働いていました。そんな中で、楽しみは夫婦そろっての週末キャンプ。
将来自然豊かなキャンプ場を自ら運営してみたいと考えていた二人は、いつしか理想のキャンプ地となる場所を探し始めるのでした。
しかし、なかなかいい場所は見つかりません。
そんなある日、ゆりさんのもとに、げんさんの娘のゆきさんから「げんさんが、ほたる村の後継者を探しているけどいい人を知らないか?」と連絡が入りました。
その時、ゆりさんは昔の楽しかったほたる村のことを思い出し、「私が見に行きたい!」と答えたのでした。
のぶさんゆりさんの2人は早速ほたる村へ赴きました。ゆりさんにとって20年ぶりのほたる村です。
でもそこには依然と変わらない、なーんにもないほたる村がありました。
カッパのげんさんカッパ子さんと久しぶりに再会し、ほたる村や日和佐を案内してもらいました。
海山川がある自然豊かな日和佐となーんにもないほたる村にのぶさんとゆりさんは多いに惹かれました。すると、その場で「よし気に入った、ここでキャンプ場をやる!」と宣言。
まさかその日のうちに決めてしまうと思っていなかったカッパのげんさんはびっくり仰天でした。
第五章 みんなと作るほたる村
のぶさんゆりさんに引き継がれたほたる村はこれからどうなっていくのでしょうか。
ほたる村は、カッパのげんさんとカッパ子さんだけで作りあげられた場所ではありません。
30年の間に、ほたる村に来てくれた多くの人によって作られ、少しずつ今の形になってきました。
今でも変わらずほたるが乱舞するその自然は、みんながほたる村の自然を大切にしたいという思いから守られてきたのです。
そして、のぶさんゆりさんも、これからのほたる村も、今までと変わらず多くの人に愛される場所でありつづけたいと、願っています。
これから30年後もかわらず、なーんにもないほたる村。
一人や二人では守れない自然を、みんなで守り、受け継いでいきたいと思うのでした。
のぶさんゆりさん、そして、ほたる村に遊びに来てくれたみんなと作るほたる村をお楽しみに!